
当時、M4を含むMoTeC製ECUが「別格」と言われたのは、前回解説した
ECUレスポンスの他にもうひとつ、圧倒的なデータロガー機能を内蔵していたからです。
誰でもわかるMoTeCの連載でも幾度となく紹介しました。
単にデータロガーを搭載しているだけではなく、ログを解析する専用ソフトウェアの性能と扱いやすさが高く評価されたことで、レースやチューニングの世界だけではなく、車輌、エンジン、補機類などを開発する現場でも幅広く活用されました。
サーキットやドラッグレースでは、実際に走らせた後にノートPCでロガーを開きログを検証するという、それまでに無かった光景がみられるようになりました。
アクセルの踏み方やどこまでエンジンを回していたかを確認するだけではなく、各回転域での空燃比やブースト、全開走行時の水温上昇スピード、全開を続ける事で徐々に吸気温度が上昇する状況など、エンジンの状況を数値として残す。
仕様に適合したラジエターやインタークーラーの容量や、セッティング後に吸排気系を変更した変化を見極める事が容易になり、チューニングが劇的に進化しました。
単に空燃比や点火時期のセッティングを詰められるだけではなく、より仕様に最適なパーツを選択したり、短い開発期間で(実際に効果のある)オリジナルパーツを製作できるようになったとエンジニア様の話を聞いたのも、この頃です。
MoTeC M4はセッティングするPCが無くなるという問題から製造終了となり、MoTeC M84の登場、そして現在のMoTeC M1へと進化しました。
特にMoTeC M1のハード/ソフトの進化は凄まじく、(あれだけ凄いと言われたM4と比較して)制御レスポンスが10倍以上と言われています。
そして、進化したのはハードだけではありません。
ログを閲覧するソフトウェアも進化を繰り返し、現行モデル「i2」は、世界中のエンジニアが絶賛する解析ソフト界のパイオニアとなりました。
近年、i2のユーザーが劇的に増えましたが、それは単に解析性能に優れているだけではありません。
日本語表示が可能になったこと。
ドライブシミュレーションのログがi2で解析できること。
世界のレースの現場で使われているi2がシミュレーションで利用できるようになった事で、これまでMoTeCを知らなかった方や、まだ免許を取得できない年齢の方の中にも、手足のように活用できるユーザーが増えはじめました。
MoTeC M4が現役だった頃とは時代が大きく変わりましたが、MoTeCのエンジン制御とログ/解析は、今なお進化を続けています。
最新モデルに関する御相談だけではなく、MoTeC M4に関する御質問も大歓迎です。 古い機種だけに御希望に添えない部分も出始めていますが、これからもMoTeC M4を宜しく御願い致します。

画像は、水没した車輌と一緒に水没したMoTeC M4(…を分解洗浄して乾燥中)。
完全防水モデルではありませんが、水の進入が僅かだった事、車輌側の防水コネクターを正しく利用していた事で復活した例です。
(現行モデルの完全防水モデルは御用意できますので御相談ください)
MoTeCの機器はラリーなど過酷なレースで酷使することも多いため、この手の
「水を被ったけどそのまま走った」
「大クラッシュしたけど壊れず最後までログを記録していた」
このような話を耳にすることは少なくありません(ぜひ映画OVER DRIVEを見てニヤリとしてください)。
こんなタフな部分もMoTeCの自慢です。
写真提供:株式会社マルマン・モーターズ