MoTeC その他 コラム■誰でもわかるMoTeC■

誰でもわかるMoTeC その1

 随分昔にGワークスという雑誌で連載していた、MoTeCの記事です。
 
 当時スタンダードモデルだったMoTeC M4の、操作方法やセッティングの基本、P.I.D制御の考え方などを連載で解説しました。
 
 セッティングといえば空燃比と点火時期調整をイメージする中で、組み合わせるエンジンの気筒数やインジェクター、クランク角センサーの同期など、セッティング以前の初期設定にはじまり、各種補正、アイドルコントロールやブーストコントロールなど、一通り解説させて頂きました。
 
 ただ、残念な事にセッティングで使用するPCの進化が目覚ましく、対応PCの入手が「秋葉原のジャンクショップでも難しい」という状況になり、連載は終了。
 MoTeC M4も次世代モデルのMoTeC M84にバトンタッチしました。

MoTeC M4は何が凄いのか

 製造終了となってしまいましたが、MoTeC M4は非常に優れた傑作モデルで、現在も多くの御客様の愛車を制御しています。
 制御をMoTeC M4に替えただけで、
レスポンスが違う。
音が違う。
タイムアップした。
 
 相次ぐこのような声の秘密は何だったのか。MoTeC M4の何がライバルを圧倒するスペックだったのか。
  
ここでは、高性能の秘密を公開します。
 
 当時のライバル機種と比較して圧倒的だったのは、制御レスポンスです。
 
 燃料マップや点火マップを詳細に構築しても、エンジンの俊敏なレスポンスに追従した制御ができなければ意味がありません。
 例えば800rpmでアイドリング中に、アクセルをポンと踏み込んで空吹かしで5000rpmまで上昇する時間が0.5秒だとします。
 アイドリング中はスロットル開度0%で、5000rpm時には開度100%。
 この間には燃料マップのサイトがいくつもありますが、0.5秒の瞬間に「いくつの数値が実際に反映されるか」が、ECUの制御スピードです。
 
 解りやすく説明すると、制御スピードが極端に遅いECUの場合、エンジン回転が上がっているのにアイドリングのマップを読み続け、5000rpmに到達する頃になって、ようやく5000rpmのマップを反映させたりします。

 このようにレスポンスが極端に悪いECUを使用する場合、「濃くしないと壊れる領域で薄い部分のマップを読む」や「点火を進めたら危ない領域で進んだマップを読む」という、ECUの呼応遅れに因るリスクを回避するために、かなり甘いセッティングが必要になります。
 
 ここで重要なのは、甘いセッティングで良ければ問題なく走る反面、エンジンレスポンスもサウンドも燃費も劣ってしまうという部分です。
 
 MoTeCに変えただけで、どうしてレスポンスが良くなったのか、なぜ乾いた音なのか、同じ仕様なのに燃費が良くなった…など、これまで多くの方から驚きの声を聞きました。
 
 これらの理由は制御速度の速さに尽きます。

 マップが細かければ高性能…ではなく、重要なのはマップを反映する速度の速さ。
 
 反映する速度が速いからこそ、「ECUの呼応遅れで壊れるリスクを気にせず」全域をキッチリと詰めたセッティングができ、精密に反映するからこそエンジンのレスポンスやサウンドが良く、無駄を省いた燃費の良さを実現します。

 制御スピードの速さは、ハードウェアのグレードを上げるだけでは実現しません。
 徹底して無駄を省いたプログラムが、多数の補正を加えても負荷の掛からない動作を実現するのです。

 そして、単にスペックが良いだけではなく、30年以上前にMoTeC M4制御化した多くのユーザーが、今なお元気に走らせているという実績が、耐久性と信頼性の高さを裏付けています。

中古を利用する場合

 「中古のMoTeC M4を購入しました。セッティングするには何が必要ですか」年に数回、このような相談を頂きます。
 専用のコネクター、ハーネスキット、PCと接続するインターフェイスケーブルは、現在も御用意できますが、一番の問題は設定やセッティングに使用するノートPCです。

 推奨環境はWindows98以前のOSを搭載し、シリアルポート(D-Sub 9ピン=RS232C)が付いている物です。
 こちらも当然ながら中古しか存在しないため
「問題なく起動するのか」
「キーボードは反応するのか」
「シリアルポートは接続できるのか」
など、不安要素が山積みです。
 
 そして問題はソフトウェア。
 現在もMoTeC M4のソフトウェアは無料ダウンロード出来ますが、当時のPCは現在のインターネット環境で簡単に接続できないため、直接ダウンロードするのは困難です。
 USB端子付きモデルもありますが、Windows98はUSBメモリー非対応(しかも規格がUSB1.1)。
 
 実際にはCDR搭載モデルを購入して、現在のネット接続可能なPCでダウンロード→CDRに焼いて…という方法が妥当のようです。ただ、中古品を購入する際「CDRが動作するのか」という不安要素が追加されます。
(現実問題として難しいことから、他の方法で接続しセッティングされている方の声も聞きますが、それが原因で問題が発生しているため、非推奨です)