MoTeC ECU コラム◆燃料噴射と燃圧と電圧◆

燃料噴射と燃圧と電圧

 自動車の電圧は常に一定ではありません。電圧が大きく落ちる時があります。
そんな時…
・インジェクターがちゃんと開かない
・燃料ポンプの回転数が落ちる
どちらも電気で動いているので、こうなってしまうのは仕方ない。仕方ないけど、その瞬間にエンジンが正常に動作できないのは大問題です。
(ちなみに、MoTeC M1はプラグに火が飛ばなくなる程度の電圧まで落ちても正常動作します)

燃料噴射と燃圧と電圧

 燃料タンクからガソリンを送り出す燃料ポンプは、エンジンルームまで「高い圧力」でガソリンを送ります。フューエルインジェクターを開くと、高い燃圧の掛かったガソリンは勢いよく噴き出ます。わずか一瞬の開閉で燃焼に必要な最適な量が噴射されるのです。
 このように、ポンプとインジェクターは二人三脚で燃料供給をおこなっているのですが、電圧降下の際は、お互いにバラバラの行動を起こしてしまいます。

 電圧が低いと、インジェクターは開閉作業が遅くなって噴射量が減りますが、MoTeC ECUには古くから電圧補正機能が搭載されているため、電圧がドロップした際にインジェクター吐出量が減らない設定ができました。

 この機能は「電圧が落ちて開く量が減るのを予見して、低電圧時に開く時間を増やす」という、機械的に開閉時間を補正する物です。同時にポンプも電圧の影響で燃圧を落としているため、インジェクターが問題なく開いても噴射量は落ちてしまいます。
 開閉時間を調整するのではなく、電圧降下時の空燃比を見て補正すれば燃圧降下分も含めて帳尻が合いそうですが、電圧降下でポンプに影響が発生してから実際に燃圧変化が発生するまでにはタイムラグがあり、話は簡単ではありません。

 極端な例になりますが、
オーバーラップの大きいハイカムやブリッジポートのエンジンで「低い回転数でアイドリングさせる」ような場合、エンジン回転が波打つように脈動するため、バッテリーが弱いと電圧も上下します。
インジェクターは補正を入れて正常に開閉するものの、上下する電圧の影響でポンプが一定回転を維持できず燃圧が波打つ。連続して発生する電圧降下と燃圧降下の波は一定では無くなるため、補正の瞬間の燃圧が読めないのです。
 ところが、燃圧補正を同時におこなえば、電圧補正との組み合わせで正常な燃料噴射ができるのです。

 実際問題、通常走行中に大きな電圧変化は起きないように思えるかも知れませんが、アクセル一定でも走行中にライト点灯やエアコンON、パワーウインドウの開閉など、電圧を変動させる要素はたくさんあり、その瞬間に「無駄に濃い」「無駄に薄い」空燃比にならない制御をおこないます。

 これはMoTeC M1がどのような状況でも精密にエンジンを制御する一例ですが、ここまでやるからこその精密制御です。
 以前ディスプレイロガーの項で解説した「精密な燃料消費率」の計算が可能な理由も、ここまでやっているからです。単純にインジェクターに通電した時間で計算する消費率とはレベルが違います。
 
 よくMoTeCにすると「空ぶかしから音が違う」「レスポンスが良い」「燃費が良くなった」と言われますが、音もレスポンスも燃費もエンジンが本来持っている性能を引き出したに過ぎません。そして、それができるのがMoTeCです。


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